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「クイックデリバリー」という新たな選択肢を日常に
中国で目にした「当たり前」とは?

株式会社エニキャリ 代表取締役 小嵜 秀信さん

関西大手小売企業にてEコマース黎明期からECサイトの立ち上げに携わった後、大規模ECサイト構築・運営を行う事業や中国国内における小売事業を経験。大学の研究機関でのオムニチャネル・ニューリテールの研究を機に、クイックデリバリー事業に参画、2019年に株式会社エニキャリを設立されました。

執行役員 大石 平さん

国内IT企業、外資系IT企業で営業、セールスエンジニアを経験後、日本におけるOMO推進を目的としたクイックデリバリー普及を目指し、株式会社エニキャリの執行役員に就任されています。

事業内容について教えてください。
我々は 「街中の商品が30分で手元に届く社会」を作ることを目指している会社です。つまり、「デリバリー」を使いたい人が、使いたいときに、簡単に使えるようにするというクイックデリバリープラットフォームサービスを運営・提供しています。
具体的にはいくつかのパターンはあるのですが、一番分かりやすいものとしては我々が運営している「anycarry.jp」というフードデリバリープラットフォームです。サイトから料理を注文されたユーザのもとに、自社で雇用しているドライバーが料理をお届けする、というビジネスを展開しています。
デリバリーといえば「フードデリバリー」というイメージがありますが、
「anycarry.jp」はあくまで事業全体の中の一部ということでしょうか?
はい、日本ではフードデリバリーが主流なのですが、我々は「DeaaS(Delivery as a Service)」という考え方に基づいたサービスを展開しています。DeaaS とは、誰もが配送員となり、誰もが配送を依頼し、誰もが荷物を受け取ることができる流通サービス、という定義でして、独自で使っている言葉です。例えば我々の仕組みを使うと、事業者であるお客様が持っているWeb サイト、EC サイトの中に「今すぐお届け」という機能を提供することができます。つまり我々と契約いただければ、お客様にて配達手段を持たなくても、扱っている商品を購入された方の手元に30分~1時間以内でのお届けが可能となります。代表的な事例ですと、ビックカメラ様と契約をしていまして、現在では「ビックカメラ.com」の「渋谷東口店」にある商品を我々がお届けしています。
今後は、このようなクイックデリバリーインフラを主に大手のクライアント様に対して提供していきたいと考えています。
最初にフードデリバリーからスタートされたのはなぜですか?
日本でクイックデリバリーが浸透している領域はまだフードのみなので、まずはフードから認知を獲得した後、徐々に物販やその他商品のデリバリー展開を目指していこうと考えています。
フードデリバリー領域ではレッドオーシャンになりつつありますが、差別化しているポイントはありますか?
「サービスクオリティの高い配達」が我々の強みだと考えています。配達スタッフは直接雇用を基本としており、交通ルールの教育や研修をおこなうなど、ユーザだけでなく街中の皆さまに安心感を提供する配達を目指しています。他社の配達は業務委託でスタッフがやりたい時に配達をおこなう、という仕組みを採用しているために、経済合理性という観点では非常に優れています。
一方で、例えば雨の日になるとスタッフが足りずユーザが利用できない、もしくは追加の配達料をユーザが負担するという仕組みになっています。我々は配達スタッフの業務時間が決まっているので、土砂降りになろうと変わらず運びますし、価格が上昇するということもありません。
ビジネスの性質上、物理的な距離や土地の問題を考慮する必要が出てくると思いますが、やはり東京、首都圏をメインに広げていくのでしょうか?
現時点でいくと、創業期であるため首都圏を中心におこなっていますが、ニーズ自体は地方都市、札幌や大阪、名古屋などにも当然あると考えているので、ゆくゆくは地方、過疎地域の皆さまにも我々のサービスを利用いただきたいと考えています。例えば元気なおばあちゃんが、足腰が弱い近所のおじいちゃんの代わりに物を運んであげるとか、そのようなことが実現できる公共的な事業にしていきたい、というのが最終的なゴールと考えています。
「DeaaS」の領域で事業をやっていくことを決めたきっかけは何ですか?
エニキャリを創業する前は、中国でスーパーマーケットを経営していました。中国は日本と比較して「デリバリー」の領域が非常に進んでいる国で、大手2社が全ての街を覆うようにインフラを持っているので、どこに行ってもクイックデリバリーが日常に溶け込み、当たり前に存在しているんですね。自分自身もユーザとして、事業者として、クイックデリバリーを利用していたので非常に便利であることも実感していたのですが、ふと日本を見たとき、まだそれが全く当たり前じゃないことに気づきました。日本の大学で流通について研究を進め、日本の「流通における未来の変化」でクイックデリバリーについて発表をした時、ペイフォワードさんも含めて様々な方に「面白い!」と言っていただけました。
研究結果では2023年から中国で見た光景が日本でもスタートするという想定が出ています。じゃあ2023年までにそのインフラを持っていればとんでもないことになる!やろうぜ!という感じでスタートしました。
実際に体験しているからこそ、確信されていたのですね。
中国ではどの程度、日常に溶け込んでいるのですか?
例えば、日本だと友人の誕生日にはSNSを使って「おめでとう」とメッセージを送りますよね。中国であればメッセージに加えて、友人の職場の近くにいるデリバリースタッフにコンタクトを取ってケーキをデリバリーしてもらう、ということが日常的に起こっていました。何せすごく便利なんですよ!
最近だとメッセージに加えてギフト券を加えて送ることも増えたと思いますが、やっぱりお菓子とかお花とか、物を送った方がより温度感が使わるし、それは早くやりたいですね!
直近の事業の展開を教えていただけますか?
現在、提供している「anycarry.jp」ですと「誰でも手軽にすぐ始められる」のがメリットなのですが、一方で「ユーザデータ、購買データを事業者のお客様で蓄積できない」というデメリットがあります。特にチェーン展開している飲食店や物販店が重視するポイントですね。「anycarry.jp」のようなメディア型のプラットフォームを主軸とした展開となると、データは提供しないという方針になるか、データをもとに新規事業、マネタイズ化するという方針になるのですが、僕たちの場合は喜んでデータを提供したいと考えています。
僕たちがやることとしてはDeaaSなので配達業務のみをビジネスの領域と定め、例えば弊社のプラットフォームを介して取得したデータはお客様が抱えているWebサイト、ECサイトに繋げていただいたき、お客様自身でデータ活用ができるような仕組みを整えたいと考えています。我々の仕事は「街中のものが30分で手元に届く社会」を作ることなので。
立ち上げから現在までにペイフォワードが一番関わっていた時期はいつ頃でしたか?
事業を立ち上げる前ですね。2019年の2月ぐらいから8月の設立までの間が、一番壁打ち相手として関わっていただいたと思います。当時は、ペイフォワードさんに限らず様々な多くの方にも話していたのですが、事業の可能性を一番強く感じ、多角的な視点で見ていたのは間違いなく代表の谷井さんだったと思いますし、自分の中で大きな軸にしていました。
大きな軸にしようと判断した理由は何ですか?
話をする時に、感度、感覚が一番合っていたからですね。そして、様々なバランスの良い観点を持っている、とも感じました。世の中には投資家目線が強い方と事業家目線が強い方、それぞれいらっしゃるのですが、その両方の目線を持っている人間って実はかなり稀有な存在なんですね。その両方を持っている数少ない1人が代表の谷井さんだと思っています。具体的には、自分が中国で見た光景を日本風にアレンジしたときの仮説は持っていたんですけど、それをビジネスに落とし込んだ時の仮説に対する欠点を指摘いただく、といった客観的な視点をいただけたのがありがたかったです。
会社を設立するまでの準備期間の中で、一番困難だった問題は何ですか?
資金を集めるにせよ人を集めるにせよ、中国の日常の光景を実際に見たことがある人とそうでない人との差がすごく大きく、そのギャップを埋めるのが一番難しかったです。中国を知っている人間からすると、クイックデリバリーがある世界が夢でも妄想でもなく、当たり前の現実だったので、 それを知らない人に伝えて納得してもらうことがすごく大変でした。
最近は、ペイフォワードとはどのような関わりをされていますか?
おかげさまでエニキャリはインフラというビジネスの特徴上、日本を代表する大企業の方からお問い合わせが来ることも度々あるんですね。当然、ビジネスの規模感も大きくなるので社運を左右するような話があった時に、ダイジェストに情報を伝えて意見を求めることが多いです。やはりその時もさっきお話したように、事業家と投資家の両方の目線を持った客観的な意見、というのを参考にしています。
「クイックデリバリー」のリーディングカンパニーとして、日本の「流通」をどのように変えていきたいですか?
今は、オンラインでもオフラインでも消費者が店舗に行って購入する以外の選択肢がほとんどありません。そこに消費者から店舗にお願いしてすぐに届けてもらう、という新しい選択肢を我々が日常的に提供していきたいと考えています。オンラインショッピングがどれだけ便利になったところで、明日以降に届く商品と今すぐ欲しい商品は全く違いますし、ニーズも異なります。我々はEコマース、オンラインショップの企業と比較されることが多いのですが、我々の競合は消費者自身だと考えています。なぜなら消費者自身で店舗に行って購入して持って帰る、という日本の当たり前の行動の中に、我々がデリバリーする、という選択肢を入れてもらう必要があるからです。
顧客によってニーズは変わりますが、例えばたまたまケガで動けない時や、小さなお子さんが熱を出している時に、自分で店舗に行って購入して持って帰るという選択肢だけでなく、我々のインフラを選択肢の中に入れてもらうようにしていきたいと考えています。
「流通」のマーケットはどのようになると思いますか?
デリバリーインフラは間違いなくこれからも伸び続けます。中国も伸びています。今の日本はデリバリーの領域は全国をカバーしている「宅配」、特定のエリアのみを担当する「ルート配送」の2つに分かれていますが、中国ではここに「クイックデリバリー」も含まれています。それぞれの領域が確立し、区分けされながら市場全体としてますます成長し続ける領域であると考えています。
最後に、これから起業を目指したり新規事業を生み出す方に向けて、
何かメッセージをお願いします。
「谷井さんの言うことを聞け!!」

という一言ですね。それ以上でも以下でもないです。かぎかっこ付き、大文字でお願いします(笑)

※記載されている内容は取材当時のものであり、一部現状とは異なることがありますが、ご了承ください。